デマ発信者の考察2
デマを発信する人の頭の中
無責任な「言いっぱなし」は、なぜ生まれるのか?【詳細解説版】
Part 1: 内的要因 (エンジン) – なぜ発信するのか?
🔥 主要燃料: ルサンチマン
自身の境遇への不満やストレスが、特定の「仮想敵」への屈折した憎悪に変わる。
ストレス・不満
😠
仮想敵への転嫁
🎯
エリート, メディア, etc.
デマ拡散という「復讐」
💣
研究・データからの視点
⚙️ 思考の癖: 認知バイアス
ダニング=クルーガー効果
自分の能力を過大評価し、リテラシーの低さを自覚できない。
研究者と論文
【Wikipedia】ダニング=クルーガー効果
【原文】Why do we fail to accurately gauge our The abilities?:The Dicision Lab
【日本語翻訳】私たちはなぜ自分の能力を正確に評価できないのでしょうか?:The Dicision Lab要約
確証バイアス
信じたい情報ばかりを探し、反証は「敵の工作」と見なす。
研究者と実験
【Wikipedia】認知バイアス
【原文】Confirmation Bias: Why Smart People Make Dumb Choices:DEAN YEONG
【日本語訳】確証バイアス:賢い人がなぜ愚かな選択をするのか:DEAN YEONG要約
Part 2: 外的要因 (環境) – なぜ止められないのか?
🌐 プラットフォームの特性
SNSの構造自体が、デマの拡散を助長する側面を持つ。
研究・データからの視点
・エコーチェンバーとフィルターバブル: 法学者のキャス・サンスティーンは、人々が自分と同じ意見ばかりを聞く閉鎖的な空間「エコーチェンバー」で過激化すると警告。また、活動家のイーライ・パリサーは、アルゴリズムがユーザーごとに見せる情報を最適化する「フィルターバブル」によって、知らず知らずのうちに異質な意見から隔離される危険性を指摘した。
【原文】Danger in the internet echo chamber
【日本語翻訳】インターネットのエコーチェンバーにおける危険性
【原文】The Case for Government Control of Internet Speech Grows Weaker: Filter Bubble Edition:John Samples
【日本語訳】政府によるインターネット言論統制の根拠は弱まる:フィルターバブル編:ジョン・サンプルズ要約
・MITの研究: 2018年に科学誌『Science』で発表されたMITの研究では、Twitter(当時)において「嘘は真実よりも、はるかに速く、広く、深く拡散する」ことが示された。特に政治関連のデマが最も拡散しやすく、ボットではなく、人間のユーザーがその拡散の主な原因であることも明らかにされている。
【原文】The spread of true and false news online (Science)
🇯🇵 社会的背景
社会全体の不信感と分断が、デマが根付く土壌となっている。
研究・データからの視点
・権威への不信: 世界的な広報会社エデルマンが毎年発表する「信頼度調査(Trust Barometer)」の2024年版日本向け報告書では、政府やメディアに対する信頼度が依然として低い水準にあることが示されている。特に「政府のリーダー」や「ジャーナリスト」への信頼は低く、人々が公式情報よりもSNSなどの非公式な情報源を信じやすい状況を示唆している。
Edelman JP
・感情的(情動的)分断: コロンビア大学のシーナ・アイエンガーらの研究が示すように、現代の政治的分断は、政策的な対立(「あなたの政策に反対だ」)よりも、感情的な対立(「あなたという人間が嫌いだ」)の側面が強まっている。この「感情的分断」は、相手陣営を貶めるためのデマを、その真偽を問わずに信じ、拡散させる強力な動機となる。
【Wikipedia:日本語訳】選択の芸術
Part 3: 致命的な無知 – なぜ無謀でいられるのか?
「消せる」という幻想
削除ボタンを押せば、全てが消えると思っている。
「残らない」という現実への無知
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スクショ
🗄️
魚拓
まとめ
一度ネットに放たれた情報は、デジタル・タトゥーとして残り続けることを知らない。
研究・データからの視点
【Wikipedia】ストライサンド効果
Part 4: 模倣の連鎖 – なぜ「上の人」を真似るのか?
政治家、自称ジャーナリスト、知識人などの著名人が「言いっぱなし」の先鞭をつけることで、一般ユーザーがそれを模倣する「模倣犯」の構図が生まれる。
🗣️
模倣
👥
言動を正当化するメカニズム
- 1. 「許容性」のシグナル: 影響力のある人物が無責任な発言をしても罰せられず、むしろ注目を浴びる様子は、「このような言動は許される、むしろ得をする」という強力なメッセージとして社会に発信される。
- 2. 集団的規範の低下: 本来、言論の場で守られるべき「検証」や「熟慮」といった規範が、リーダー層によって破られると、社会全体の規範意識が麻痺します。かつては「恥ずかしいこと」だった無責任な発言が、「普通のこと」へと格下げされてしまう。
- 3. 支持者による「武器」としての利用: フォロワーや支持者は、ただ模倣するだけではない。彼らは、尊敬する著名人の攻撃的なレトリックや「言いっぱなし」のスタイルを、自分たちのSNS上での論争における「武器」として積極的に借用し、自らの言動を正当化する。
研究・データからの視点
・社会的学習理論 (Social Learning Theory): 心理学者のアルバート・バンデューラが提唱。人は他者(特に地位や魅力の高い「モデル」)の行動を観察し、その結果(罰せられるか、報酬を得るか)を学習することで、自らの行動を決定するとした。著名人は強力なモデルであり、彼らの無責任な発言が罰せられないどころか注目を集める(報酬を得る)のを見れば、観察者はその行動を模倣しやすくなる。
【原文】Albert Bandura’s Social Learning Theory
【日本語翻訳】アルバート・バンデューラの社会学習理論
・エリートからの合図 (Elite Cues): 政治学では、一般の人々が複雑な政治問題について判断する際、信頼する政治家やエリートの意見を「合図(キュー)」として利用する傾向が知られている。エリート層がデマを容認、あるいは発信すれば、支持層はそれを「信じても良い」という合図として受け取り、情報の真偽を自ら検証する動機が著しく低下する。
【原文】key term – Elite cues
【日本語翻訳】キーワード -エリートキュー
Part 5: 社会への波及 – ポスト・トゥルース時代
「言いっぱなし」の構造は、社会全体で負のスパイラルを生み出す。
研究・データからの視点
【Wikipedia】ポスト真実の政治
結論
デマや偽情報の発信は、単なる個人の資質の問題ではない。個人の内面的な「ルサンチマン」をエンジンとし、「認知バイアス」によって暴走し、「著名人による悪しき先例」が模倣を誘発する。これらが「プラットフォームと社会環境」の中で増幅され、「デジタルへの無知」が最後のブレーキを壊している。全てが組み合わさった、根深く、解決の困難な現代社会の病理である。